知る
公開日:2023.06.20
更新日:2023.06.20
【プロ直伝!】美味しいマグロの見分け方
あなたが選んだ、そのマグロはおいしいマグロ?
実は、価格は同じでも当たり外れがあることを知っているだろうか。同じ棚に陳列されていても部位によって異なる味や食感。
私はマグロのプロである。半生をマグロと共に過ごし、マグロを愛して止まない解体師イカリダだ。私自身もたくさんの失敗を犯し「マグロを見る眼」を養ってきた。その培ってきた経験と学んだ専門知識を基に、この記事では「美味しい鮪の見分け方」を公開する。
【イカリダ流:美味しいマグロの見極めポイント】
① 筋目
繊維の流れを見極める。
スジの向きと薄さを。
② 色
鮮度は身の色に表れる。
より鮮やかな赤色を。
③ 水分
ドリップは旨味成分。
より少ないものを。
素材選びの時点から料理は始まっている。「イカリダ流」をマスターし、料理屋に負けない上質なマグロを手に入れよう!
良いマグロの特徴~おいしさの3ヶ条
まずは、マグロの良し悪しを見分ける前に、良いマグロの3つの特徴を押さえておこう。それがこれだ!
①より新鮮なマグロ
②より中心に近いマグロ
③適切に管理、解凍されたマグロ
一つずつ詳しく紹介しよう。
【より新鮮なマグロ】
・見た目に美しい
色鮮やかな赤身、コントラストが映えるトロ身。
魚介類の中でも特に重宝され、主役となる存在だ。
・鮮烈な味わい
独特の旨味と豊かな風味。
赤身の奥深さと、トロ身の口溶けは、他では代替が効かない。
・栄養満天
高品質のたんぱく質、豊富なビタミン。
体の健康維持や脳の活性化にも効果が発揮されることは意外と知られていない。
そう。万人のイメージ通り、魚の鮮度とおいしさは比例する。
【より中心に近いマグロ】
・スジが少ない
赤身の天身と呼ばれる部位。
中心の中骨周辺で、特に色や味も濃くマグロ好きには人気がある。
・スジもとろける
マグロの最高級品、カマ下の大トロ。
脂の度合いは高いが、口に入れた瞬間にとろけ、脂の旨味がたまらない。
骨に付いた「中落ち」が極上の旨さなのは、まさに中心部分だからである。
【適切に管理、解凍されたマグロ】
・冷凍でも高鮮度
下手な生マグロより、遥かに旨い。
水揚げ後の処理、超低温での管理、運搬。冷凍技術の進化を甘くみてはいけない。
・ドリップが少ない
ドリップとはマグロを解凍するとでてくる水分のこと。この水分には、旨味成分、栄養素が含まれてるためドリップ量が少ない方がよいとされる。
以上がおいしいマグロの3ヶ条だ。
【例外】熟成マグロについて
適切に長期低温保存することで、アミノ酸が分解され旨味が増すというものだ。
新鮮なマグロとは対照的だが、実に美味である。しかし、条件を満たすことは一般的ではないため詳述は割愛する。
念のため簡単に「熟成マグロに必要な条件」を挙げておく。
・専門的な知識と経験
・非常に高価な大型の生マグロ
・塊のまま適温で保存できる環境
悪いマグロの特徴~刺身には向かない
次は、悪いマグロについてだ。良いマグロとは正反対のものを想像してほしい。それがこれだ。
①時間の経ったマグロ
②外側、尾寄りのマグロ
③不適切に管理、解凍されたマグロ
こちらも一つずつ解説しよう。
【時間の経ったマグロ】
・色が悪い
料理は五感で楽しむことができ、見た目は重要だ。色素たんぱく質であるミオグロビンが、くすんだ赤色、褐色したマグロは新鮮ではないと教えてくれる。
・マズい
おいしさと鮮度は比例する。
時間の経過は見た目だけではなく、味や食感にも影響を及ぼす。
古いマグロはおいしくない。
【外側、尾寄りのマグロ】
・スジが強い
基本的には外側ほど固い繊維があり口に残りやすい。
白いスジが太く厚い部位は刺身には向かない。
・スジが多い
スジは樹木の年輪のようなイメージだ。
より身の細い尾寄りの方がスジの間隔が狭く、運動量も多く固いスジになりやすい。
刺身ではなく、加熱調理向きだ。
【不適切に管理、解凍されたマグロ】
・ドリップが流れ出ている
旨味成分は抜けて、味に深みがない。
豊富な栄養素も流出し台無しである。
・余計な水分はバイ菌が増殖する
多くのバイ菌は「温度×水分×栄養分×時間」で増殖する。
食中毒の危険性が高く、安心して食べることはできない。
ずさんな管理でマグロが悲鳴を上げているのだ。
以上がマズいマグロの3つの特徴だ。
日本で流通するマグロの種類、身色、味の特徴
国内で流通するマグロは、主に以下の5種類だ。
・クロマグロ
・ミナミマグロ
・メバチマグロ
・キハダマグロ
・ビンナガマグロ
それぞれの「別名」「生息海域」「身色」「体長」「味の特徴」を表にまとめたのでご覧いただきたい。
名称 |
別名 |
身色 |
生息海域 |
体長 |
味の特徴 |
クロマグロ |
・本マグロ
・シビ
・ヨコワ(幼魚)
・メジ(幼魚) |
濃赤 |
北半球
太平洋の熱帯、温帯海域 |
大型
2.5~3m |
・脂の乗りがよく、旨味が強い
・バランスのとれた酸味と甘み |
ミナミマグロ |
・インドマグロ |
濃赤 |
南半球
太平洋、インド洋、大西洋 |
中型
2~2.5m |
・クセのない甘み
・コクのある味わい |
メバチマグロ |
・バチマグロ
・バチ |
赤 |
全世界
熱帯、亜熱帯海域
(地中海以外) |
中型
2m前後 |
・脂控えめのさっぱりとした味
・ほどよい甘味 |
キハダマグロ |
・キワダ
・マシビ
・キメジ(若魚) |
薄赤 |
全世界
熱帯、亜熱帯海域
(地中海以外) |
中型
1~2m |
・クセのないあっさりとした味わい |
ビンナガマグロ |
・ビンチョウ
・ビンナガ
・トンボ |
ピンク |
全世界
熱帯、亜熱帯海域 |
小型
1~1.4m前後 |
・柔らかい身質
・加工品向きの淡泊な味わい |
ぜひスーパーや市場でマグロを購入するときに参考にしてほしい。
【本題】スーパーで買うべきマグロのサクはこれだ!
ここからが本題だ。
マグロのサクの良し悪しを判断し、スーパーで買うべきマグロの見分け方を伝授する。
魚の鮮度や優劣を判断するにはエラや目、ウロコ残り具合、腹のとろけ加減などを見るのが一般的だ。しかし、サクで陳列されるマグロの場合は確認できず、トレー包装されていて触れることもできない。巨大なマグロが数多くのサクに分けられた中から、目視で判断するしかないのだ。
マグロのサクの判断材料は、①筋目 ②色 ③水分である。1つづつ解説していく。
筋目の見分け方のコツ〜最重要ポイント〜
まずは、筋目だ。
マグロの筋目を見極めることは、美味しいマグロを選ぶ上で最重要といっても過言ではない。
マグロの身の白い帯状の部分をスジといい、スジ全体の向きや間隔、厚さなどを総じて筋目と呼ぶ。筋目は樹木の年輪のように、中骨を中心に全体に存在している。
「良いマグロの特徴」でも紹介したように、より中心のサクが良い。とはいえ、素人がサクを見て部位を判断するのは容易では無い。そこで具体的に確認するべきポイントは以下の通りだ。
①薄く柔らかいスジ
外側になるほどスジが厚く硬くなる。
②間隔広めでより少ないスジ
外側になるほどスジの間隔は狭く多くなる。
③平行~斜めの向きのスジ
外側になるほどスジは縦向きや半円状になる。
スジが口に残るのは、食べていてストレスになる。ポイントに注意して良質なサクを選ぶことが大切だ。
鮮やかな赤色〜LEDライトに注意!
次に、色だ。
色も非常に重要な判断材料で、マグロの種類によって身の色は異なるが、基本的には色がより濃く、鮮やかなものが良い。(種類ごとの色は上の表を確認してほしい)
スーパーでも仕入れの関係上、陳列されたサクは同じ魚体を切り分けパック包装しているはずだ。よって、陳列されたサクから、より身の色が濃く鮮やかな赤色のものを選ぶのが良い。
ちなみに、ブロックからサクに切り出した直後は色が悪い。これはマグロの赤色の正体であるミオグロビンというタンパク質の性質に因るものだ。とはいえ、状態の良いマグロであれば、陳列されている頃には鮮やかに発色しているはずだ。
【内出血、血線の有無】
血が滲んでいるような内出血や血線にも注意してほしい。
明らかに見た目が良くないため分かりやすいが、これは漁獲時の擦れや打ち身で傷んだ証拠である。
広い範囲に血が回ることもあり、陳列商品全体に及ぶこともある。
そのような時には、買わない、店を変えるといった判断も必要だ。
【LED照明】
スーパーの生鮮食料品(魚・肉・野菜)の売り場の照明を見たことがあるだろうか?
実は店舗内の通常の白い蛍光灯とは異なり、オレンジ色のLEDスポットライトで生鮮食料品を照らしている。
このライトは、端的にいえば「黄ばみを抑え、赤みを鮮やかに見せる」照明技術だ。
おいしそうな色で購買意欲を高める、スーパー側の企業努力だ。
目ぼしいサクを手に取ったら、くるっと180度後ろを向いて、色味を確認することも忘れてはいけない。
旨味が逃げていく!ドリップを確認
さらに、水分だ。
マグロから出ている水分は「ドリップ」といい、ドリップの正体は栄養素や旨味成分である。
表面から滲む水分の有無や、下に敷かれたスポンジ状の吸水シートを確認しよう。ドリップはより少ない方が良いため、吸水しきれずにトレーに赤色の液体が溜まっているものは論外だ。適切に管理、解凍されていないとドリップは大量に出てしまう。水揚げ後の処理が悪い場合や再冷凍品の可能性も否定できない。
最後に、ラベルの表示内容も確認することもお忘れなく。
日付はもちろん、産地や生か解凍かも表示されている。
食品ロス問題があるが、刺身で食べるなら鮮度は重要だ。新しいものを選ぶべきだ。
スーパーも刺身用マグロの鮮度が落ちれば、惣菜として加工する。惣菜を買う時は「手前取り」を実践して食品ロス防止に貢献したいものだ。
【魚市場編】素直にお店の人に任せる
魚が好きな人、あるいは観光先で市場へ買い物に行くこともあるだろう。
市場にはスーパーとは比較にならないほど、たくさんのマグロがある。素人がその中から、自分に合ったマグロを選ぶのは、容易なことではない。
そこで、市場でマグロを買う際には
・自分の好み
・予算
を伝えよう。
洋食屋でワインを頼む時に、ソムリエに任せるのと同じ感覚だ。
半端な知識では、自分に合ったものを手に入れることは難しい。
また、市場のプロも
・おいしいマグロを食べてもらいたい
・満足して、また来てもらいたい
という気持ちを必ず抱いている。
冷凍マグロであれば、適切な解凍・保存方法を。あるいは、おすすめの食べ方も喜んで教えてくれる。
万が一、愛想が悪く、気に入らないときは「急用を思い出した!」と言って二度と近づかなければいい。
まとめ【マグロの見分け方】
この記事では、マグロの見分け方を解説してきた。
良いマグロ、悪いマグロ、それぞれの特徴を知ることで買うべきマグロを選ぶことができる。
【おいしいマグロを見極めるポイント】
①筋目/スジが少なく薄いもの、向きは平行〜斜めのもの
②色/鮮濃赤、血の有無を確認して、ライトにも注意
③水分/ドリップ量と表面の水分を確認
刺身は素材が命!おいしいものを食べることは幸せである。
マグロの解体ショー、驚愕と感動のショータイム
最後に、当店自慢の「マグロの解体ショー」を紹介する。
・絶品な味わいが口中に広がる
・驚愕と感動が交錯する演出
・希少な部位と至福のグルメ体験
・特別なひとときを大切な仲間と共に
マグロの解体ショーは、まさに驚愕と感動が交わるショータイム。
最高のエンターテイメントと贅沢な美食を堪能できる。
美味しいマグロを食べたいなら、ぜひイカリダが解体したマグロを一度食べてほしい。
この記事を書いた人
マグロ解体師 碇田(イカリダ)
主に都内でマグロ解体ショーのパフォーマンスをしています。
このコラムをきっかけに私を知っていただいた皆様と「マグロ解体ショー」でお会いできることを楽しみにしています!自宅では味わえない興奮必至のパフォーマンスと新鮮なマグロ料理を堪能いただけます。パーティー、お祝い事、イベントなどで盛り上がること間違いなし!
マグロ解体ショーについての詳細はこちら