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マグロ解体新書

COLUMN
知る
公開日:2023.07.27
更新日:2024.02.05

【マグロの漁獲方法】四漁法と最高峰「大間の漁法」を徹底解説

巨大な体のマグロは、一生泳ぎ続け、瞬間的速度は時速100キロにも及ぶという。
そんなマグロの漁獲方法を知りたくはないだろうか?
この記事では「マグロの漁獲方法について」詳しく解説する。
現在、行われている主な漁獲方法は以下の4種で、それぞれに一長一短がある。
・定置網漁
・巻き網漁
・延縄漁
・一本釣り
大間のマグロ漁については、漁師のこだわりを凝縮し、わかりやすく物語風に仕立てた。
海の中を魚雷のごとく泳ぐマグロを釣り上げることが一筋縄にはいかないことはわかるはずだ。
この記事を書くのは、鮪解体師のイカリダだ。命懸けの漁師達には心からの尊敬の念がある。漁獲方法を知ることで、マグロを食すことの有難みが深まるはずだ。

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【マグロの漁獲方法】四漁法と最高峰「大間の漁法」を徹底解説

・【マグロ漁の歴史】縄文時代から現在

・【マグロの漁獲方法】主な4つの漁法を徹底解説

・【大間一本釣り物語】一番マグロを目指して

・【まとめ】マグロの漁獲方法

【マグロ漁の歴史】縄文時代から現在

まずは、時代と共に進化したマグロ漁の変遷を簡単に紹介しよう。

【縄文時代】

・大木をくりぬいただけの船
・植物の繊維を編んだ糸
・平らな石に切り込みを入れたオモリ
・動物の角や骨で作った針や銛(もり)
日本人とマグロの関係は深く、およそ6000年前の縄文時代に遡る。当時の貝塚からマグロの骨や釣具が発見されている。このような道具を用いて海へ出て、釣りをしていたと考えられている。

【奈良時代】

・手漕ぎ船
・漁り火(いさりび)を使っておびき寄せ銛で突く
「万葉集」「古事記」「日本書紀」においてマグロの記述があり、銛漁や釣漁に関する和歌が収められている。

【江戸時代】

・釣具として「網」が考案させる
・船は手漕ぎ
網による大漁、醤油のヅケ、屋台鮨で安価かつ大量に出回り大衆化。一方、海図はなく、星や島を頼りにする漁労作業は、事故や遭難も多く過酷を極めた。

網を使った江戸時代の漁は具体的に以下のような漁法である。
・三陸地方沿岸での定置網漁
・駿河湾の入り組んだ地形での追込型の裁切網漁(たちきりあみりょう)
・宮城~福島での巻網漁
・千葉南部での人力延縄漁

【明治~戦前】

・漁船の帆船化
・明治後期には動力化
・漁船の大型化、鋼船化
・延縄の巻き取りの機械化
・航海期間は1週間程度
・漁獲統計の整備

漁場は陸から50マイル(約90Km)の沖合いまで拡大し、回遊するマグロを獲れるようになった。缶詰、冷凍品の輸出需要が高まり、ビンナガマグロ、キハダマグロも漁獲量が増加した。マグロは外貨獲得のための重要な輸出商材でもあった。

【戦後~現代】

・冷蔵、冷凍設備の普及
・魚群探知機の普及
・ソナーの開発
・航海期間1年以上も可能

第二次世界大戦による船員喪失や、占領軍からのマッカーサーライン(操業海域の制限)を乗り越え、先人たちはさらに漁業を発展させた。
特に、1960年代以降の「−50℃以下で保存できる技術」はマグロ漁にとって革命的な転換点である。

超低温保存の恩恵は具体的に以下のものだ。
・地中海や大西洋まで全世界が漁場化
・種類、サイズ等の規格を揃えることが可能
・缶詰用から刺身用に単価の向上

【マグロの漁獲方法】主な4つの漁法を徹底解説

次に、現在のマグロ漁について、主な4種類を解説する。それぞれに長所と短所があり、マグロに関わらずあらゆる水産物を対象に行われている。

定置網漁とは?~待ちの漁法〜

定置網漁

出典:農林水産省

【特徴】
・固定した網による漁法であり、伝統的な方法の一つ
・網を張り巡らせ潮の流れを予測して魚を誘い込む
・魚は網に沿って泳ぎ、先の袋状の網へと誘導される
・袋状の網に一度入ったら出られない構造

【長所】
・魚体を大きく傷つけずに捕獲できる
・一度に多くの数を捕らえることができる
・過剰漁獲に陥りにくい
・漁場が沿岸付近のため新鮮な魚を供給できる

【短所】
・海底に生息する魚は獲ることができない
・目標以外の魚も混獲してしまう

巻き網漁とは?~一網打尽の漁法~

まき網漁

出典:農林水産省

【特徴】
・ソナーや探知機で魚群を発見することから始める
・泳ぎ回る魚群丸ごとを大型の網で包み込む漁法
・主にアジ、サバ、イワシなどの大群で回遊する魚を対象とする
・複数の船を連携して操業する

【長所】
・効率が良く、一度に多くの魚を獲ることができる
・魚の回遊に応じて容易に漁場を移動できる
・水産物の安定供給や自給力の維持・強化に貢献している

【短所】
・乱獲の問題を引き起こす可能性がある
・他の海洋生物や生態系に悪影響を与える恐れがある
・一部の魚種で漁獲制限が設けられている
・網の中で暴れ回り、擦れ、打ち身が多い

延縄漁とは?~大規模漁法~

はえ縄漁

出典:農林水産省

【特徴】
・1本の幹縄に多数の枝縄をつけた構造
・遠洋大型船では幹縄の長さが150Km、針は3000本にも及ぶ
・目印のブイと各枝縄に餌を仕掛け、一定期間放置してから回収する
・枝縄の長さによって海層を調節できる
・遠洋では冷凍庫を備えた船内で保管される

【長所】
・網を使用する漁法に比べて、目標の魚種に特化した漁が可能
・自動化が進み、枝縄の取り付けや魚の回収などの作業が効率的
・水産資源に対して比較的優しい漁法とされている
・多数の釣り針で一度に多くの魚が獲れる
・魚体に傷が付きにくく、市場価値が高い

【短所】
・漁師の作業量が多く時間がかかる
・延縄にかかったウミガメや海鳥などの海洋生物が死亡するリスクがある

一本釣りとは?~古来からの漁法~

一本釣り

出典:農林水産省

【特徴】
・1本の釣り糸に1個~数個の針をつける、シンプルで原始的な漁法
・技術と感覚が必要で奥深く、熟練した漁業者が多い
・海、河川、湖沼などあらゆる水域で多くの魚類を対象にできる
・レジャーとしても人気がある

【長所】
・混獲数が少なく水産資源の持続可能性を保てる
・深い場所や潮流の速い海域でも、仕掛けや海層を自由に変えて対応できる
・魚体に傷が付かず、新鮮で市場価値が高い

【短所】
・他の漁法と比べて漁獲量が少ない
・技術を継承するための後継者が不足している

【大間一本釣り物語】一番マグロを目指して

「今年の一番マグロは過去最高値、青森県大間『大漁丸』の3億5千万円です!」
正月休みの最中、マグロ初競りのニュースが世間を賑わせた。

3日前……

20XX年1月2日

本州最北端の地、青森県の小さな漁村「マグロ一本釣の町」大間。

冷たい風の吹く早朝、マグロの一本釣りに向かうため、大漁丸は健一と息子の健太を乗せ出航した。
今日が健一にとって最後の漁である。
60歳を過ぎ、体力の衰えから限界を感じていた。そんな矢先、東京でサラリーマンをしていた健太が「俺も親父みたいなマグロ漁師になりたい」と、唐突に漁師になる決意を告げてきた。
息子の言葉に心底喜び、後継者不足に悩む漁師仲間からも羨ましがられた。それから3年。マグロ一本釣りの基本を徹底的に教えた。
しかし、マグロ漁師は「危険を伴い、命懸けでマグロと対峙する」仕事だ。その不安は、未だに払拭できないでいる。

船はGPSを頼りに、前回釣れたポイントに到着した。最新のソナーにもマグロの群れが映し出されている。健太と150万円ずつ折半した最新ソナーは、数キロ先の魚群が、どちらに向かって泳いでいるかまで手に取るようにわかる。

自分が若い頃と比べ、漁師も大きく進化しているが、全てを機械任せにはできない。その内のひとつは泳ぐ方向と、食べる餌を予測して、マグロの進行方向に餌を投入することだ。

サンマ、イワシ、イカなど餌の種類を変えながら反応をみる。
当たりはない。
重ね着したダウンと雨具の袖から冷たい風が侵入する。
冬の海風は容赦なく体温を奪い、耳はちぎれるように痛い。
時間だけが過ぎていく。

ガシャン!

テグス(糸)が船尾に激しく当たり、鋭い音が響く。
洋上で波に揺られること5時間。
ようやく獲物が食いついた。
健太はすぐに船を反対方向へ舵を切り、釣針を上顎に深く食い込ませる。
大間の一本釣りは、「テグスと針と餌」だけの極めて簡単な仕掛けだ。「決してテグスを手に巻き付けてはいけない」と最初に教わる。テグスを巻き付けた指は、マグロが餌に食いついた瞬間に無くなるからだ。

テグスを巻き取り機にセットして、タイミングをみながら少しずつ巻き上げる。
テグスはおよそ100m。
獲物は頭を左右に振り、激しく暴れる。
テグスが引き戻される。
次の瞬間には船の下に潜り、全力で逃げようとする。
再び巻いたテグスは引き戻される。

予報では降らないはずの、みぞれ混じりの雨も降りはじめた。
指先がかじかみ、感覚が奪われる。
それでも手は止められない。
懐に忍ばせてある、お湯入りペットボトルで指先を温める。
野生の獲物も抵抗を続ける。
真剣勝負だ。

すでに食いついてから30分。
テグスは残り20m。
ついに大間名物の出番だ。
テグスに沿わせて「電気ショッカー」を投入する。
獲物に触れた感触でスイッチを入れ、感電した獲物は仮死状態になる。
一気に巻き上げると、英名「bluefin tuna」の名の通り、蒼い巨体のクロマグロがその姿を見せる。
こめかみに銛を打ち込みとどめを刺す。
数十分の格闘の末、ようやくマグロを釣り上げた。

しかし、釣って終わりではない。
マグロは釣り上げた直後の処理が何よりも重要だ。
身のヤケを防げるか、否かがマグロの品質を決定づけるためだ。

まずは、神経を破壊する。
脊髄に針金を差し込み、死後硬直を抑える。
次に、血抜きだ。
尾や動脈を切り脱血し、血栓を防ぐ。
更に、エラ・内臓抜き。
足の早い内臓を除き、腐敗を遅らせる。
最後に一番大切なのが、大量の氷水での冷やし込みだ。
激しく抵抗するマグロの体温は40℃にも達する。
体温の上昇は身をヤケさせる原因となる。ヤケたマグロは茶色く変色し、競り値に大きく影響する。
つまり、いかに早く冷やし込みできるかが、明暗を分ける。

氷水の入った船倉にマグロを入れ、ようやく健一の顔に笑みがこぼれ、健太は拳を天に突き上げた。

【まとめ】マグロの漁獲方法

この記事では、マグロの漁獲方法について書いてきた。

現在、行われている主な漁法は以下の4種類だ。
・定置網漁
・巻き網漁
・延縄漁
・一本釣り

国産マグロで圧倒的な知名度を誇る「大間のマグロ」については、物語を通して漁法を紹介した。
主な特徴は以下の通りだ。
・テグス、釣針、餌だけのシンプルな一本釣り
・電気ショッカーで気絶させて釣り上げる

そして、釣り上げた後の処理がマグロの品質を左右する。
・神経締め
・血抜き
・徹底的な冷やし込み

マグロに限らず、お金を払えば、大抵のものは食べることができる。
しかし、命懸けで人生を掛けて、食材を届けてくれる人がいる。

改めて、そんな現実を知るきっかけとなれば幸いである。食材も生き物だ。
その命をいただくことに感謝することは言うまでもない。

【参考文献】
朝倉書店:「マグロの科学」
NHK出版:「マグロの最高峰」

この記事を書いた人

マグロ解体師 碇田(イカリダ)

主に都内でマグロ解体ショーのパフォーマンスをしています。
このコラムをきっかけに私を知っていただいた皆様と「マグロ解体ショー」でお会いできることを楽しみにしています!自宅では味わえない興奮必至のパフォーマンスと新鮮なマグロ料理を堪能いただけます。パーティー、お祝い事、イベントなどで盛り上がること間違いなし!

マグロ解体ショーについての詳細はこちら

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