マグロ解体新書
COLUMN【マグロの保存方法】劣化する3つの原因を抑え、美味しさをキープしよう!
小さな子どもからお年寄りまで、みんな大好きなマグロ。
そんな人気のマグロは、きちんと保存しないと、あっという間にマズくなってしまうことを知っているだろうか?
おいしく食べるためには、正しい保存方法を知っておく必要があるのだ。
そこで、この記事ではマグロが劣化する3つの原因と、その対策を解説し、家庭でもできる最適な保存方法を共有する。
【マグロが劣化する3つの原因】
①酸化
②温度
③ドリップ
【最適な保存方法】
なるべく大きい塊のまま、保鮮紙で包み、密封袋に入れて、チルド室に保存する。
この記事の執筆者はマグロのプロフェッショナルであり、マグロとマグロの魅力を解体するイカリダだ。「手に入れたマグロをおいしくいただき、命あるマグロに感謝」をしてもらえたら、これほど嬉しいことはない。
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・【マグロの正しい保存方法①】空気に触れさせるな!
・【マグロの正しい保存方法②】徹底的に冷やせ!
・【ワンポイントアドバイス】冷凍マグロの解凍方法
・【マグロの正しい保存方法③】ドリップから守れ!
・【マグロが残ったら】ひと手間調理で大変身!
・まとめ【適切な保存】美味しいマグロを食べよう
【マグロの正しい保存方法①】空気に触れさせるな!
マグロが劣化する原因の1つ目が酸化だ。
切ったマグロの表面は空気中の酸素によって酸化する。酸化はマグロの褐色化を促進し、見た目だけではなく、味や食感にも悪影響を及ぼすのだ。
マグロの変色は酸化が原因
まず、マグロの赤色の正体はミオグロビンという色素たんぱく質だ。
ミオグロビンの変化がマグロの色を決定し、順を追って説明すると以下のようになる。
①濃赤色/ミオグロビン
実は塊から切り出した直後のマグロは、鮮やかな赤色ではない。赤身は赤黒く、トロ身は淡い赤色だ。
②鮮赤色/オキシミオグロビン
数分〜数十分後には、ミオグロビンが酸素と結合(酸化)して、オキシミオグロビンへと変わる。オキシ化は鮮やかな赤色を発色させ、見た目にも美しくなる。
③褐赤色/メトミオグロビン
さらに時間が経過し、オキシミオグロビンの酸化が進むとメトミオグロビンとなる。メト化は赤色を褐色させ、見た目や味、食感を悪くする。
このように、ミオグロビンの酸化の進行度合いによって、マグロの色が変わっていくのだ。
なるべく大きい塊のまま保存
次に、できる限り酸化を防止する対策を紹介する。
【なるべく大きい塊で保存】
食べない分は切らずに、可能な限り大きな個体で保存し、空気に触れる表面積を減らすことが重要だ。一般的に家庭では、サクと呼ばれる長方形の塊で保存することになるだろう。
マグロの塊を大きい順に示すと以下のようになる。
①丸ごと1匹
②ロイン(3枚に卸し片身を背と腹に分けた¼匹分)
③ブロック(ロインを3~4つに切り分けた塊)
④サク(ブロックから切り分けた長方形の小さな塊)
【ラップで包んで保存】
物理的に空気を遮断することも大切だ。
ラップ以外にも、密封袋を活用しても良い。
※密封袋の空気を抜く方法
・袋の口を少し開けてストローで袋内の空気を吸い込む
・封をする前に水に沈め水圧を利用して封をする
ちなみに、肉類もブロック→スライス→ミンチの順に表面積が増すほど、劣化が早まる。
【マグロの正しい保存方法②】徹底的に冷やせ!
マグロが傷む原因の2つ目が不適切な温度管理だ。
保存する温度によって、ミオグロビンのメト化が進んでしまうことがある。
マグロは冷蔵と冷凍が流通しているため、それぞれの適切な温度帯を解説する。
冷蔵マグロは0度で保存
まず、家庭で扱うことの多い冷蔵マグロの場合だ。
冷蔵マグロには、近海で獲れた「生マグロ」と、遠洋で獲れた「冷凍マグロ」を解凍したものがあるが、どちらも保存方法は同じである。
結論から言えばチルド室で保存するのが正解で、チルド室の0℃付近が最適の温度帯である。
野菜室や冷蔵室では少し温度が高く、マグロの保存には向かない。劣化が早まってしまうので、間違えて冷蔵室に仕舞ってはいけない。
参考に一般的な家庭用冷蔵庫の温度帯を以下に記しておく。
野菜室 3~7℃
冷蔵室 2~5℃
チルド室 0~2℃
冷凍室 −20~−18℃
『プロの技!』マグロの氷止め
プロの技「氷止め」を紹介する。
手順は以下の通りだ。
①マグロのサクを専用の保鮮紙で包む
②ラップでピッチリと包む
③密封袋に入れ、空気を抜き、封をする
④タッパーにたっぷりのかき氷を入れる
⑤密封袋ごとかき氷に埋める
⑥丁度0℃の冷蔵庫に保存する
「氷止め」なら安定的に0℃を保てて、マグロの鮮度維持が可能である。
冷凍マグロは-50度以下で保存
次に、冷凍マグロについてだ。マグロの冷凍は釣り上げた直後から始まる。頭部に穴を開けシメ殺し、血抜き、エラと内臓の処理の後、船上で急速冷凍され、ー60℃で管理される。そのような冷凍技術の進歩で、マグロの鮮度維持は飛躍的に向上した。
【超低温保存の理由】
ミオグロビンは低温であるほど、メト化の進行を遅らせることができるためだ。
【急速冷凍の理由】
劣化する温度帯を素早く通過させるためである。
「ー10〜0℃」の温度帯はメト化が著しく進み、ドリップの原因となる氷結晶生成温度帯は「-5〜-1℃」だ。
【家庭での対策】
残念ながら、家庭用冷蔵庫の「ー20℃」程度ではメト化を防ぐことはできない。
そのため、刺身で食べるなら1週間以内を目安に食べてしまおう。
【ワンポイントアドバイス】冷凍マグロの解凍方法
冷凍マグロの解凍方法は主に2つ。
・冷蔵庫で解凍する「冷蔵解凍」
・氷水で解凍する「氷水解凍」
プロがおすすめするのは、空気より熱伝導率が高い氷水解凍だ。
氷水解凍のメリット
・早く解凍できる
・ドリップが少ない
・ちぢれ(収縮)が小さい
氷水解凍の手順
①ボールに塩水を作る(3%、水1L:塩30G)
②塩水で冷凍マグロの表面を洗う
③クッキングペーパーなどで水気を取る
④密封袋に直接入れ、空気を抜き、封をする
⑤氷水に沈める
サクの場合60〜90分程度で解凍される。
ただし、量が多い時は手間が掛からない冷蔵解凍のほうが良い。
手順は③まで同様で、1サクずつクッキングペーパーで包み、バットなどに重ならないように並べて冷蔵庫で半日ほど解凍しよう。
ところで、釣り上げてから短時間で冷凍されるマグロは、解凍時に死後硬直が起こる。この現象を「ちぢれ」といい、冷蔵解凍の方がちぢれは大きく出るから注意が必要だ。
【マグロの正しい保存方法③】ドリップから守れ!
マグロがマズくなる原因の3つ目がドリップだ。
ドリップが大量に出ればマグロのおいしさは半減し、余計な水分は食品の劣化を早め、食中毒の危険も増す。ドリップを適切に処理することも、マグロを管理する上で大切な要素となる。
ドリップの正体は旨味成分
「ドリップとは何か?」について解説する。
【ドリップの正体】
・食材の水分
・栄養分
・旨味成分
ドリップはおいしい成分であり、より少ない方が良い。
【ドリップによる悪影響】
・水分量の減少で食味悪化
・栄養成分の含有量低下
・おいしくない
・バイ菌にとって良好な環境
おいしい成分が流れ出て食材はマズくなり、菌も増殖しやすい。
【ドリップの原因】
・凍結時の氷結晶による細胞破壊
・保存時のタンパク質変性による保水力の低下
・解凍時の常温解凍では内外の温度差
ドリップは、主に冷凍された食材を解凍する時に出てくる。
特に温度を下げる際の、氷結晶生成温度帯である「-5〜-1℃」では水分が大きな氷結晶となり、膨張して細胞を破壊してしまうことが原因だ。
【ドリップ防止策】
・急速冷凍
・超低温保存
・氷水解凍、冷蔵庫内解凍
氷結晶生成温度帯を素早く通過し、なるべく低温で保存し、上手に解凍しなくてはいけない。決して常温に放置してはダメだ。
クッキングペーパー/専用の保鮮紙
生マグロでも、解凍マグロでもドリップは必ず出てくる。そう、適切に管理されていてもだ。
しかし、安心してほしい。
ドリップの処理は難しくはない。
解凍時やその後の保存時に紙で包み、1日1回以上交換するだけだ。
【紙の種類】
ドリップをしっかり吸水してくれる紙で包む必要がある。
選択肢は主に3種類だ。
①キッチンペーパー
でこぼこでエンボス加工された紙
②クッキングペーパー
フェルト状生地の紙
③専用の保鮮紙
鮮魚や肉類の鮮度維持に特化した紙
おすすめは③→②→①の順だ。
プロの経験上、専用の保鮮紙は圧倒的に優れ、ドリップをしっかりと吸水し変色を防いでくれる。
保鮮紙はネットから簡単に購入でき、キッチンに1つあれば、マグロ以外の魚や肉にも効果を発揮する。
【マグロが残ったら】ひと手間調理で大変身!
適切に保存しても、傷む前に食べきれないこともあるだろう。そんな時は少し手を加えてみよう!
【調理するメリット】
・味の変化が楽しめる
・保存期間が延長できる
・バイ菌をやっつけられる
調味料でコーティング!非加熱調理
非加熱調理なら傷む前の「食べきれないマグロ」を使い、漬けやマリネにしてみてほしい。
簡単なひと手間で食味がガラリと変わり、食卓に彩りを与えてくれる。調味料でコーティングされ、浸透圧の効果も得られオススメだ。
《メモ:浸透圧とは》
食材の内外の塩分濃度の差異によって起こり、内部から水分が抜け、旨味が凝縮される。
【マグロの漬け】
マグロ 100g
醤油 大さじ1
みりん 大さじ1
酒 大さじ1
①みりんと酒を煮切りアルコールを飛ばす
②醤油を加える
③切ったマグロを30分浸ける
このレシピなら1晩経ってもしょっぱくない。
少し甘めのレシピだから、好みでみりんを減らしても良いだろう。
・ワサビと一緒に「そのまま」
・とろろと刻み海苔で「山かけ」
・白飯、大葉、海苔、胡麻で「丼」
【マクロのマリネ】
マグロ 100g
レモン果汁 大さじ1
オリーブ油 大さじ4
塩、胡椒 少々
①調味料を合わせる
②マグロを漬け込む
③冷蔵庫に30分寝かせる
レモン果汁が無ければ酢やビネガーでもOKだ。
・玉ねぎやレタスと「カルパッチョ」
・胡麻油とコチュジャンで「韓国風」
・粗びき胡椒やニンニクで「アレンジマリネ」
最強の食中毒対策!加熱調理
加熱調理に向くのはこんなマグロだ。
・スジの強い部分
・大量のマグロ
・少し傷んだマグロ
特に「傷んだマグロ」にも活用してほしい。明らかな腐敗は論外だが、少し変色した程度なら問題なく食べられる。しかし、刺身ではなく、食中毒の危険もあるため加熱しよう。
厚生労働省のデータでは「75℃/1分以上の加熱」によって食中毒の危険性を大幅に減らすことができる。加熱は最強の食中毒対策であることを覚えておこう!
【ツナフレーク】
マグロ 300g
ニンニク 1片(スライス)
油 200cc
塩 小さじ1
胡椒 少々
香草 お好みで
①マグロに塩して30分放置
②浸透圧で水分を出し旨味凝縮
③鍋に全ての材料を入れ中火に掛ける
④身が白くなったら極弱火で10分
⑤ひっくり返して10分
お好みでローズマリーやローリエを入れてもいい。ツナ缶でおなじみだが、自家製なら10倍ウマイ!しかも万能食材だ。
・生野菜と一緒に「サラダ」
・玉ねぎ、キノコを炒めて「パスタ」
・マヨネーズと和えて「おにぎり」
タッパーに移してマグロが油に完全に浸るようにすれば、2週間は保存できる。
【生姜煮】
マグロ 300g
生姜千切 20g
醤油 大さじ3
みりん 大さじ3
酒 大さじ3
砂糖 大さじ1
①マグロに薄く塩を振る(分量外)
②20分後、熱湯をかけて霜降りする
③水で冷まして水気を切る
④全ての材料を鍋に移し中火にかける
⑤優しく混ぜながら中火のまま5分
生姜が効いて臭みはない。甘辛に仕上げて「ご飯のお供に」「酒のつまみ」に最高である。
まとめ【適切な保存】美味しいマグロを食べよう
この記事ではマグロの保存方法を解説してきた。
大前提は、買い物をするなら当日食べる分だけ買うことだ。
しかし、当然ながら保存しておく場合もあるだろう。その時に大切なのは、劣化する原因を理解することである。
【マグロが劣化する原因とその対策】
①酸化/大きい塊のまま、できる限り表面積を少なくする
②温度/0℃付近で安定したチルド室に仕舞う
③ドリップ/吸水性のある紙で包み、1日1回交換する
マグロも生き物である。
食材を無駄にせず、命をいただくことに感謝できる人はステキだ。
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最後に、当店の「マグロの解体ショー」をご紹介します。
・鮮度そのままの絶品な味わい
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・希少部位と贅沢な饗宴
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