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マグロ解体新書

COLUMN
知る
公開日:2023.07.13
更新日:2024.02.05

【マグロの刺身】おいしい切り方~スジの制する者がマグロを制する

漁師が命懸けで釣り上げる「黒いダイヤモンド」
赤身、中トロ、大トロ……部位によって異なる味わい。
そして、切り方ひとつで、おいしさが変わる。

そんなマグロを適当に切ったらモッタイナイ。

誤魔化しが効かない刺身をコントロールできるのは、切り方だけである。
スジのことも知らずにマグロを切ってはいけない。しかし、安心してほしい。この記事を読めば「マグロの刺身をおいしく切る方法」がわかる。

私はイカリダ。スジを極めた鮪のプロ。鮪を解体し、鮪のおいしさと魅力を最大限に引き出すことが生業である。

【イカリダ式:マグロの切り方】
スジが手前に倒れるように置き、筋と直角に包丁を入れ、一太刀で切る。

イカリダ式の切り方を学び、筋目を見極め、マグロのおいしさを最大限に引き出せるように切ろう。もちろん、美しい盛り付けまでしっかり案内しよう。

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【マグロの刺身】おいしい切り方~スジの制する者がマグロを制する

・マグロの筋(スジ)とは?

・柵(サク)をまな板に置く向き

・おいしい刺身の切り方

・刺身用包丁の特徴とおすすめの切り方練習法

・【ワンポイントアドバイス】刺身の美しい盛り付け方

・【マグロの切り方まとめ】スジを見極め、おいしい刺身を引く

・マグロの解体ショー、最高のエンターテイメント

マグロの筋(スジ)とは?

マグロの切り方を説明する前に、スジについて知る必要がある。

マグロのスジとは、赤色の身の中にある「白い帯状の繊維」のことで、その成分はコラーゲンやたんぱく質から成る。

スジは中骨を中心にして、丁度、樹木の年輪のように身全体に存在する。スジ全体の流れや方向、厚さ、間隔などをまとめて「筋目」と呼ぶ。

筋目は魚体の場所によって、その向きや薄さ、幅、硬さが異なる。特に、背中の「分かれ身」や尾にはスジが密集する。

マグロは生まれてから死ぬまで止まることなく泳ぎ続ける。ゆえに、筋肉量も多く、筋肉を支えるスジが強くなるのは必然である。それがマグロのスジだ。

柵(サク)をまな板に置く向き

マグロの刺身の切り方を解説するにあたって、前提として2つの条件を示す。

条件①:短冊形のサクを用いること
条件②:右手で包丁を持つこと
(左手で包丁を握る場合は、左右反対になる)

まずは、筋目を見極めるためのアドバイスだ。

刺身の切り方は、後述するように主に2つ。
・サクの右側から切る「平造り」
・サクの左側から切る「そぎ造り」

刺身を切る時は、包丁を奥から手前に動かす「引き切り」だ。そのことから、プロは刺身を切ることを「刺身を引く」という。

《サクの置き方》
サクはまな板の上に横長に置くのだが「正しく」置かねばならない。これは、初心者にとって少々ややこしく感じるが、避けて通れない道である。

ところで、サク置き方は4パターンあることにお気付きだろうか?

(A)そのまま
(B)Aを180度回転
(C)Bをひっくり返す
(D)Cを180度回転

答えは1つ。正解を導くヒントはスジに隠されている。

《サクの横からスジを見る》
横からスジを見る目的は「身崩れを防止するため」だ。まな板の上に置かれたサクを横から覗き込み、スジの倒れる向きに注目してほしい。

引き切りは、包丁が奥から手前に向かって動く。この時、スジの流れに逆らうと「身割れ、身崩れ」が起こる。スジの流れと包丁の動きが同じ方向だと「身割れ、身崩れ」が起こりにくい。

つまり、『サクを横から見て、スジが手前側に倒れるように置く』のが正解だ。

《サクの上からスジを見る》
刺身用のサクは多くの場合、斜めにスジが入っているはずだ。もしも、縦や半円状にスジが入っていたら、それは刺身には向かないサクである。

平造りではスジが『右上から左下』に、そぎ造りなら『左上から右下』になるようにサクを置く。ちなみに、まな板に置く際はサクを手前に置くことで、刺身を引きやすくなる。

おいしい刺身の切り方

次は、本記事のメイン。包丁の使い方だ。
平造り、そぎ造りをそれぞれ解説するが、要点は同じだ。

マグロの平造り~サクの右側から引く

右端から切り出し、そのまま右側に流れるように並べる。
マグロに限らず、平造りは刺身の基本型であり、汎用性が高い。

【平造りの5つのポイント】
①スジに対して直角
スジに対して直角に引くことで、スジを短く断ち切り、口に残りにくくする。

②包丁を少し寝かせる
右手を「反時計回り」に少しだけひねり、包丁を寝かせる。それは刺身を大きく見せ、鋭角にすることで見た目がキレイになる。

③同じ幅、厚さ
同じ幅で引くことで、盛り付けた時の見栄えはより美しくなる。

④包丁全体を使って一太刀で引く
刃元から刃先まで全体を使い一太刀で引くことで、断面が一直線で見た目、口当たりが良くなる。

⑤切り離す直前、1mm残して包丁の角度を立てる
切り離す前に包丁を立てることで、角が立ち映える。

以上が平造りの極意だ。

マグロのそぎ造り~サクの左側から引く

左端から切り出し、左手で左側へ流していく。
そぎ造りもまた、刺身の王道で、あらゆる魚に使える技術だ。
断面を大きくしやすく、握り寿司に適した手法と言える。大トロは脂がくどくならない様に薄めに切るのが良い。

【そぎ造り5つのポイント】は平造りと同様だ。
唯一異なるのは包丁を寝かせる向きで、右手を「時計回りに」ひねって、包丁を寝かせれば良い。

以上がそぎ造りのポイントである。

【プロの技!】三角形のサク、身の薄いサク

マグロの魚体は紡錘形(ぼうすいけい)と呼ばれる、円柱の両端をすぼめた様な形である。
サクは刺身にしやすいように、短冊形に切り出される。しかし、当然ながら外側になるほど短冊形から遠ざかり、形がいびつになる。

前提条件を飛び越え、
・厚さは均一で三角形
・刺身にするには薄い短冊形
・引きづらい三角錐形
このようなサクを引く場合のコツを紹介する。

意識するべきことは2つ。
・スジはできる限り短く断ち切る
・刺身1切れの大きさを合わせる

【厚さは均一で三角形】
・平造り、そぎ造りどちらでもOK
・先細りに向かって包丁の角度を少しずつ大きくする

スジと包丁が直角ではなくなるが、やむを得ない。スジの短さや刺身の大きさを見ながらうまくバランスを取ろう。

【刺身にするには薄い短冊形】
・そぎ造りで引く
・包丁を大きく寝かせる

右手をより大きく「時計回りに」ひねり、包丁を寝かせることで断面を大きくする。

【引きづらいにくい三角錐形】
・包丁の角度
・寝かせる角度
・1切の厚さ

そぎ造りが適しており、先細りに向けて以上の3点を徐々に大きくする。

このような技を使うことで、形の悪いサクも無駄なく使うことができる。

スジが強いサクの対処方法

スーパーでスジの多すぎるサクを見かけないのは、売れないからだ。手を加えて「すぐに食べれらる刺盛り」や「切り落とし」として完成された状態で売られている。

とはいえ、市場でまとめ買いをしたり、もらい物で手元にあるなら、おいしくいただこう。

スジが強いサクの対処方法は3つある。

①隠し包丁
刺身1切れに残るスジを、さらに細かく切る技。
切り離さないように、裏側から浅く包丁を入れる。

②掻き身/たたき
サクを大きめに切り分け、スプーンで身を掻き取る。あるいは、スジも一緒に包丁で細かくたたく。

③炙り
刺身を軽く炙ることで、スジの主成分であるコラーゲンが溶け、口に残りにくい。

刺身用包丁の特徴とおすすめの切り方練習法

魚河岸や料理屋のプロが使うのは刺身専用の包丁だ。

刺身包丁には主に2種類ある。
・「柳刃包丁」関東型/先が尖っている
・「たこ引包丁」関西型/先が平たい
料理や鍛冶の歴史は古く、刃物はそれぞれの用途に合わせ進化してきた。

刺身包丁が「長く、細く、薄い」理由

刺身包丁の切っ先の形状は関東と関西で違うが、その特徴は共に「長く、細く、薄い」ことである。

目的はただ1つ「おいしい刺身が引けるように」
・一太刀で切れるように
・摩擦や抵抗を受けにくいように

もしも、あなたが
・刺身は自宅で引きたい
・料理が大好き
・料理のレベルを上げたい
そのような気持ちがあるなら、刺身包丁を1本買ってみるのもいいかもしれない。東京のかっぱ橋に代表されるような、料理道具の店を巡ってみるのも楽しいものだ。

時と場合によって、自宅にあるいつもの「三徳包丁」で切る場合もあるだろう。
そんな時は、幅が短いサクを選ぼう。刃渡りの短い包丁で、幅の広いサクを一太刀で引くのはプロでも難しい。

刺身を切る練習にこんにゃくを代用しよう

さて、ここで刺身を引く練習方法を紹介しよう。これは日本料理のプロ、板前の練習方法でもある。

料理屋でお客様に刺身を出せるようになるまでは、長年の修行を必要とする。しかし、高価な生魚は簡単には触らせてもらえない。そこで代用するのが「こんにゃく」だ。

こんにゃくを代用するメリットは、
・価格が安い
・サクの形と同じ短冊型
・上手に引くのは魚より高難度

だからである。平造り、そぎ造りはもちろん、薄造りも練習できる。こんにゃくをキレイに引けるようになれば、間違いなく刺身はより上手に引ける。

【ワンポイントアドバイス】刺身の美しい盛り付け方

料理は見た目だけで、喜びや感動を与えられ、食欲が湧き立つ。刺身は「向付(むこうづけ)」とも呼ばれ、日本料理のメインでもある。ちなみに、日本料理では奇数が「縁起が良い」とされ、偶数は使われない。

【刺身の盛り付けの基本】
・奥高前低
・白黒赤黄緑
・三角形
・三種、三点
・余白三割

《奥高前低》
器の奥側には、大根のツマを敷いて、刺身を山にする。平造りは立て、そぎ造りは重ねて。
手前は低く、流れるように盛る。

《白黒赤黄緑》
日本料理の基本の5色。以下を参考にバランスよく盛る。
・白/白身の魚、大根
・黒/海苔、ワカメ
・赤/赤身の魚、エビ、穂じそ
・黄/人参、菊
・緑/わさび、大葉、海藻類

《三種、三点》
奇数の中でも特に「三」はよく使われる数字だ。
例えば、刺身三種盛り。
春:タイ、カツオ、アカガイ
夏:スズキ、ハモ、ウニ
秋:カレイ、キンメ、イカ
冬:マグロ、ヒラメ、アマエビ
あるいは、一種を三ヶ所に盛っても良い。

《三角形》
器の奥中央、手前右、手前左の三角形に盛る。

《余白三割》
器の余白を三割残して盛る。

これらを知識を元に実践すれば、仕上がりは見違える。
試す価値があり、喜ばれること請け合いだ。

【マグロの切り方まとめ】スジを見極め、おいしい刺身を引く

この記事では「マグロの刺身をおいしく切る方法」について解説してきた。
手に入れたマグロは、よりおいしく食べてもらいたい。それがイカリダの願いだ。

【マグロの刺身の引き方】
①スジが手前に倒れるようにまな板に置く
②包丁はやや寝かせ、同じ厚さで
③スジと直角に包丁を入れ、スジを短く断ち切る
④包丁全体を使って一太刀で引く

刺身を引いたら、奥を高く、三角に彩り良く器に盛る。

これでマグロの刺身は完璧だ。刺身は誤魔化しが効かない。
正しい引き方を覚えれば、料理のレベルがグッと上がるはずだ。

この記事を書いた人

マグロ解体師イカリダ

主に都内でマグロ解体ショーのパフォーマンスをしています。
このコラムをきっかけに私を知っていただいた皆様と「マグロ解体ショー」でお会いできることを楽しみにしています!自宅では味わえない興奮必至のパフォーマンスと新鮮なマグロ料理を堪能いただけます。パーティー、お祝い事、イベントなどで盛り上がること間違いなし!

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